期間:2006/1/25〜2/3
ザルツブルク〜ドレスデン〜プラハ〜ィウイーン
モーツアルトイヤーの開幕である。次回のアニバーサリーである生誕300年まではあと50年、没後250年までは35年、その時の自分達の年齢を思うと「これはもう行くしかないねー・・・」とここは夫と即合意!早速ツアーに申込となりました。
今回参加した「モーツアルト生誕250年記念ツアー」の最大の見もの(聴きもの)は何と言ってもモーツアルトの誕生日に、生誕の地ザルツブルグで行なわれる「モーツアルト生誕記念祝賀コンサート」。それもあのザルツブルグ音楽祭のメイン会場となる祝祭大劇場で、演奏はウイーン・フィル、そして指揮はリッカルド・ムーテイ。これだけでも胸が躍るのに、共演者は内田光子(ピアノ)、ギドン・クレーメル(ウ”アイオリン)ユーリ・バシュメット(ウ”イオラ)、トーマス・ハンプソン(バリトン)、チェチーリア・バルトリ(メゾ・ソプラノ)、そして勿論プログラムはオールモーツアルト。
当初予定されていたソプラノのルネ・フレミングが降板し代わってメゾ・ソプラノのチェチーリア・バルトリが出演するというハプニングがありましたが、そのバルトリは本番2日前に出演依頼があったにも関わらず、さすがとも言える素晴しい歌声を私達に披露してくれました。バルトリはギャラも高く、なかなか出演しない幻の歌手、私達は何とラッキーなことか!(3月来日予定で、ピアノ付きのリサイタルで何と40,000円の値がついています)
そのバルトリがハンプソンとオペラ「ドン・ジョバンニ」の二重奏「手をとりあって」を魅惑的に披露してくれ、会場を沸かせていました。
モーツアルトの生誕の祝賀に沸くザルツブルグをあとにして、ツアーは次の目的地であるドレスデンへと。そこでも「モーツアルト週間」ということでモーツアルトのオペラ「フィガロの結婚」「コジ・フャン・トッテ」をドレスデン州立歌劇場にて連夜鑑賞し、ドレスデンで2泊した後、プラハへ。ここでは「ドン・ジョバンニ」を書いたベルトラムカ荘を訪ね、その後「ドン・ジョバンニ」を初演したスタウ”オフスケー劇場を見学させてもらう。日本では英語訳で「エステート劇場」として知られている劇場。
そして最後の訪問地ウイーンへ。
ここではツアー最後のハイライトである「イドメネオ」を鑑賞(アン・デア・ウイーン劇場)。モーツアルトのあまり上演される機会の少ないオペラである。生誕250年ともなると、日頃日が当たらないオペラにもスポットが当たるから嬉しい。2年前に北とぴあで寺神戸亮さん指揮でコンサート形式で上演されましたが、それもよかった。会員の方で行かれた方もいらっしゃる筈。
当初このオペラは小澤征爾の指揮ということで、このツアーの目玉にしていたものだが、出発数日前に主催者側の旅行会社から電話があり「小澤は病気の為降板、代わりにペーター・シュナイダーが指揮をします」とのこと。ウイーンで小澤氏の指揮でオペラ鑑賞出来ることをとても楽しみにしていたのだが、ここは病気と言われては仕方がない、諦めるしかない。そう思って臨んだ「イドメネオ」だったが、何とこれが最高に素晴しかったのである。病気の小澤さんには何とも申し訳ないのだが。まず指揮がさすがにベテラン!そしてスター歌手揃い、今あちこちから引っ張りだこのフリットリ、キルヒシュラーガー、キューマイヤー、そして主役イドメネオ役はシコフと超豪華メンバー。ウイーンまで出かけた甲斐があったと思えるもの。
オペラは総合芸術といわれるが、指揮、歌手、合唱、そして演出と見事に一体化しないとその感動は得られないとしたら、今回のこの「イドメネオ」は圧巻でオペラの素晴しさを知らしめてくれたものでした。演奏はウィーン国立歌劇場管弦楽団、演出はウィリー・デッカー、合唱はアーノルド・シェーンベルク合唱団。同行の音楽評論家の加藤浩子氏は「私の中では10指に入るもの」と断言していたし、又「常常本当にいいオペラの上演というのは、その作品がいかに素晴しいかを知らしめてくれるものだ、と思っているけれど今回の「イドメネオ」はまさにそれだった。」と私達に熱っぽく語っていた。
劇場のアン・デア・ウイーン劇場はこじんまりした規模の劇場だが、歴史を感じさせる内装で、国立オペラ座に引けを取らない。今まではバレーやミュージカルに主に使われていたが、今年から国立オペラ座、フォルクスオパーと並んでオペラを上演するそうである。
ざっと今回の旅を振り返ってみたが、月並みだが感動の連続の日々であった。ヨーロッパの冬には珍しく晴天に恵まれ、気温こそマイナスを体験したが快適な旅であった。おまけにオフということで、めったに泊まる事など出来ない超高級豪華ホテルに泊まり(ウイーンはオペラ座の隣のホテルブリストル)贅沢をさせてもらった。それでも一番の印象に残ったものは何かと問われたら、それはやはり「生誕記念祝賀コンサート」に間違いない。
天下一品、これ以上のオケが世界中探してもあり得ないウイーンフイルのつややかな音色、そして指揮はムーテイ。ミラノスカラ座を離れても、こうしてムーテイは新天地で活躍をしているという確信を得て嬉しかった。(一方で、ムーテイのいないミラノスカラ座は大丈夫かななんて思ってしまった)世界各国からモーツアルトの生誕を祝おうと集まった人々と共にこの瞬間に立ち会い、素晴しい演奏を聴く喜び、幸せを強く感じたこの日の思い出は、一生の思い出と言わずして何と言おうか。私達は何度も夢かと思い、現実を確認し合い、そして酔いしれた。
そしてもう一つ特記すべき、日本人として嬉しかったことがある。あの内田光子さんがこの注目に値する記念コンサートのソリストとして登場したことである。曲目はピアノ協奏曲第25番。最高に素晴しかった。演奏直後、上気したムーテイが彼女を何度も抱き寄せ、頬をすりよせていたが、それはウイーンフィルがそして指揮者ムーティが彼女に厚い信頼を寄せている証拠に他ならない。(これは隣で聴いていた夫の感想)。それはまさに天上から舞い降りてきた音楽に出会えた瞬間であった。
モーツアルトの音楽そのものであった。
鑑賞コンサート、オペラ一覧
1月26日 モーツァルト生誕記念祝賀コンサート(前夜祭) ザルツブルク、祝祭大劇場
リッカルド・ムーティ指揮、ウィーン・フィル、内田光子(ピアノ)、ギドン・
クレーメル(ヴァイオリン)ユーリ・バシュメット(ヴィオラ)、トーマス・ハンプソン(バリトン)、チェチーリア・バルトリ(メゾ・ソプラノ)
曲目: ピアノ協奏曲第25番
「どうしてあなたをわすられようか」「彼をふりかえりなさい」
ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲
交響曲第35番「ハフナー」
「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」オペラ「フィガロの結婚」より「こっちの勝ちだと」
オペラ「ドン・ジョバンニ」より「手を取りあって」
1月28日 オペラ「フィガロの結婚」 ドレスデン、ザクセン州立歌劇場(新制作)
マッシモ・ザネッティ指揮、ディヴィット・ムフタール・サモライ演出、カピタ ヌッチ、メシェリアコヴァ、ジョルダーノほか
ザクセン州立歌劇場管弦楽団、合唱団
1月29日 オペラ「コジ・ファン・トウッテ」 ドレスデン、ザクセン州立歌劇場
ライナー・ミュ−ルバッハ指揮、クリストフ・アルブレヒト演出、ニルンド、ブ ッター、パポウルカスほか
ザクセン州立歌劇場管弦楽団、合唱団
1月31日 オペラ「イドメネオ」 アン・デア・ウィーン劇場(新制作)
ペーター・シュナイダー指揮、ウィリー・デッカー演出、フリットリ、シコフ、 キルヒシュラーガー、キューマイヤーほか
アーノルド・シェーンベルク合唱団、ウィーン国立歌劇場管弦楽団