はたはた寿し

立冬の今日は、全国的に穏やかなお天気。都内も紅葉が進んでいます。お鍋が美味しい季節になってきました。私の故郷秋田は「きりたんぽ鍋」が有名ですが、ハタハタやタラの切り身を、豆腐やネギと一緒に煮る「しょっつる鍋」も美味しいです。これは魚醤であるショッツル(魚塩汁)を使ったお鍋で、 ショッツル は、ハタハタを主成分に塩と共に1年以上発酵、熟成しそれを濾した天然調味料です。これを適当にうすめて使います。保存がきき、秋田の特に男鹿半島の人の知恵が生きていて誇らしい。

子どもの頃は、塩味、魚、野菜のあまりにシンプルな味と、ボリューム感に乏しいこのお鍋の美味しさが分からなかったのですが、魚醤の味の特有さ、奥深さ、濃厚なうま味などは、今頃になって見直すものになっています。

「ハタハタ寿し」も同じで、市販もされていますが、かつては各家庭で必ず作り、特にお正月には欠かせないものでした。熟成させたハタハタを、細切りの人参と飯(あるいは麹)で漬け込んだもので、ハタハタのうま味と発酵による酸味、飯からの甘みがうまく融合して”発酵の極み”というべき名品です。

貞次さんは、このはたはた寿しが本当に好きでしたね。時々秋田市民市場のいつものお店から送ってもらっていましたが、美味しい、美味しいと言って食べていた笑顔が、懐かしい。
製造元によって多少味に変化がありますが、麹とハタハタが発酵した類を見ない甘さと、酸味が貞次さん好みだったのでしょうね。

♡かつては、12月ともあると、ハタハタをトラックに積んで売りに来て、箱単位(何キロ入っていたかは分からないが大きな蜜柑箱位の木の箱)で買い、各家庭で何箱も樽で漬けていました。
母が漬けていた我が家のハタハタ寿しはどこの家庭のよりも美味しく自慢でしたね。

ふるさとを、そして母を思い出す私のハタハタ寿しですが、今では好物としていた貞次さんをも思い出すものになってしまいました。。
急に食べたくなってきました・・・・。そんなにも好きだったんだから、もっともっと食べさせてあげればよかったな~。