あれからちょうど1年・・・

ちょうど1年前の2021年5月24日は、貞次さんが「僕の生きた証」といって遺してくれた作品集「永遠の友 モーツァルト  絵画と建築 高橋貞次作品集」が待ちに待って納品された日でした。
まだか、まだかと待ち焦がれ、それでも予定日より3日早まって持ってきてくださり、本物の自らの作品集を手に取り、直に見ることができたのですから、嬉しかったのだと思います。私も喜びながら、ホッとした日でもありました。この日をどんなにか待っていた事か。
いや本人がというより、私の方が、もし間に合わなければ、どんなにか悔やんだことか、本人が見ないのでは、何のためにここまで努力して作ったのか、作った意味がない、そんな思いでした。

でも、祝杯をあげられる訳でもなく、真っ先に渡したいと言って呼んでいた息子に夕方渡して、後は満足な相手も出来ずに横になっていましたから、それからちょっとして、本当に今思うと待っていたかのように逝ってしまったのですから。

あれから、ちょうど一年、今でも時々貞次さんの事が恋しくなると、手に取って、いつの間にかこの本に語りかけている。
病気になり、先が分らなくなったことで、自らの生きた証を残したくなったのだと思う。「病気にならなかったら、こんなこと思わなかったと思うよ」と、言っていましたから。だから、いろんな方の力をお借りして出来上がった1冊の作品集。

モーツァルトと共に生きた、短くも、思い残すことは何もないと言い切って、閉じた貞次さんの生涯ですが、この1冊があるからこそ、私は1年前のことを思い出したり、その時の貞次さんの事を想ったりできるのですから、やっぱり残してくれてよかったと思う。

記憶はなくなって来ても、形としてあれば、やっぱり永遠の貞次さんです。