三度楽しむ~♡♬

昨晩の、日本モーツァルト協会の例会は、ナタナエル・グーアンのピアノで、たっぷりとピアノの独奏を楽しむものでした。タイトルは「若きヴィルトオーゾの輝き」で、幻想曲ハ短調K475、ピアノソナタハ短調K457で始まりました。この2曲は連続で演奏されることが多く、出だしの一音から彼の創り出す世界に入り込んでしまいましたが、引きずり込まれてしまったと言った方がふさわしいかも知れません。ダイナミックな音に魂をつかまれた様な気持ちでしたが、終わった後に、いつもの私のお隣の方が「モーツァルトって、こんな曲も作っていたのね!」と感動の入り混じった声でおっしゃたのが印象的でした。そう思われるほど、私にも新鮮で、今までにないモーツァルトを聴いた思いがしました。

ピアノソナタの中で、2曲しかない短調作品であるK457は(他にイ短調第8番K310がある)、私が以前会員だった会で頂いたケッフェル番号でした。現在所属の会は、ケッフェル番号は頂けるのですが、くじを引くシステムで、以前の会ではそうではなく、空き番であれば希望の番号が頂けました。私が当時選んだ曲がこの曲だったと言う事ですが、あとになって、「モーツァルトがウィーンで作った最初のピアノソナタだよ」とか「ザルツブルクで筆写譜を見てきたよ」とか教えてくれる方がいて、そうなんだ、と一層の思い入れを深くしたものでした。

その後、2018年にザルツブルクを訪れた際、ザルツブルクの国際モーツァルテウム財団の所有となっているこの筆写譜を、私も実際に見た時は感慨深かった。

今朝は、 昨日の演奏家ナタナエル・グーアン が薫陶を受けたというピリスや、シフ、アシュケナージ、内田光子、個性的な演奏のグレン・グールド、グルダの演奏も聴いている。何時の頃からか、ピアノソナタは苦手となっていたジャンルだったが、今日は、なぜか楽しく聴いている。ずっと聴いていると寂しくなってくるので、苦手と思っていたが、モーツァルト特有の”寂しさと愉悦”を併せ持つ特徴の、きっと寂しさの方が勝って私には聴こえてきていたのかもしれないな、と思う。
しかし、それも人それぞれ、季節感やその時々の精神状態などで変わりゆくこと、そんなことも感じた。

旅とは、行く前と、行って、そして帰ってと、3回楽しめるものと、よく言われるが、私にとって、月一回の例会も同様で、聴く前、聴いての感動、あとの余韻に浸る楽しみ・・と3回楽しめるものの様な気がする。
要は、モーツァルトあっての、私なんだと、しみじみ感じている。