梅の木&第20番♡♬

お向かいの梅の花びらが、強風で我が家の玄関先まで舞ってきます。白梅なのに、花びらだけ見るとうっすらとピンクっぽい。可愛い花びら。昨夜からの雨でだいぶ散らされてしまった。

梅と言えば、菅原道真のこの歌を思い出す。
「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春を忘るな」(拾遺和歌集 雑春 1006番)

道真が大宰府に左遷されて詠んだうたなので、なぜか切ない。同じ シチュエーションで詠んだ歌にこんなのもある。
「桜花ぬしを忘れぬものならば吹き来む風に言伝てはせよ」(後撰和歌集・春・57番)こちらもやはり切ない。 でも、心情はとてもよくわかる。道真という方は、わかり易い言葉でいい歌を後世に残してくれた人だなと思う。古のことなのに、現在を生きる我々にも伝わってくる歌。だからこうして忘れられずに残っているのだろうな。

モーツァルトのピアノ協奏曲第20番も、まさにその一つ。音楽の世界、ピアノ協奏曲の世界では永遠に不滅の名曲として演奏され続けていくことだろうと思う。

昨晩は、サントリーホールで反田恭平弾き振りでこの曲を聴いた。オーケストラは彼がプロデュースしたジャパン・ナショナル・オーケストラで、同世代の若手実力派アーティストで結成され、今回はその全国ツァーの最終日。ソリストとしても活躍する若き俊英たちを揃え、自身指揮をし、演奏して、これほどの全国ツァーができるのだからすごい。サントリーホールでも3回の公演があったのに、昨晩は満席、女性客が圧倒的に多かった。

私が「反田さんの20番がどんなものか聴いてみたいので」と、この公演のチケットを買ったのを話した時には、モーツァルト協会の会員の間では、なんか、しら~とした感じだった。ミーハー的と思われたのか、また反田さんのモーツァルトには興味はない、そんな反応だったのか。

私は、昨晩は行ってよかったと本当に思っている、もっと私の周りの人も聴いて、その素晴らしさを共感したかった、としみじみ帰りの電車でひとり余韻に浸りながらそう思った。

それは、なぜこうまで感動できたかと考えたら、私は反田恭平という人は、本当にモーツァルトを分かっている人、好きな人、自身が幼いころから、モーツァルトに感動してきた人(本人がそう言っている)だからの、愛に満ちた、また優しさに満ちた、自身がワクワクしながらの演奏だったと感じたから。

20番のカデンツァには、いつも注目している。でも昨夜は初めて聴くカデンツァに思えて、すぐさま調べてみたら、イタリアの往年の大ピアニスト、アルトゥーロ・ベネデッテイ・ミケランジェリのカデンツァで、それもレコード時代の音源しか残っていないのを、反田さんは弾いた。第2楽章のメロディをアレンジした、とても素晴らしいものに思えて私は聴き入ってしまった。

いい20番だった。そうとしか表現できない。オーケストラも良かった、エリザベートの入賞者、ミュンヘン国際音楽コンクール優勝者の岡本誠司さんをコンマスにして、大江馨さんの日本音楽コンクールの優勝者をサブにして、金管楽器にも素晴らしい若手が揃っていて、オーケストラもモーツァルトをよく理解した人たちだったと感じている。

貞次さんにも聴かせたかった。きっと私と同じく感動したに違いない。ピアノ嫌いの貞次さんが一気にピアノ好きになった、モーツァルトピアノ協奏曲第20番二短調K466、私もいい曲だと、しみじみ思っている。永遠に何世紀たっても、演奏者にも、そして聴衆にも愛され続けていくだろう。

昨晩は、この20番で生き返った私がいた。。。