連載:モーツァルトの横顔♬

モーツァルトは生涯の三分の一を旅に暮らした人。
田辺秀樹先生はモーツァルトの生涯いついて語るとき、「父親」とならんで重要なテーマは「旅」であろう、と述べている。
モーツァルト自身も「旅をしない人間は哀れむべき存在です!」と手紙(1778年9月11日付)で言いきっています。そしてなおも、「凡庸な才能の持ち主なら、旅をしようとしまいと、しょせん凡庸のままでしょう。でも、優れた才能の持ち主は(神様のおかげでぼくはそのひとりです。)、いつも同じ土地にいたらダメになってしまいます・・・

こうして生涯にわたって旅をし続けたことで、ヨーロッパの音楽の精華ともいうべきモーツァルトの音楽が生まれたのだと。
日本流にいえば、「百聞は一見に如かず」を立証し、父レオポルトからすると「かわいい子には旅をさせろ」だったろうし、「井の中の蛙」「お山の大将」の様にはならず、大海を目指して旅立っていったモーツァルト。
私にとって、耳の痛いのは、「 凡庸な才能の持ち主なら、旅をしようとしまいと、しょせん凡庸のままでしょう。 」のくだり、いくら旅をしても、ない才能は花開かないでしょうが、でも素敵な思い出となり、経験には違いない・・なんて、言い訳をしています。

でも、モーツァルトの旅のスケールは半端なく、驚くことに旅の日数を計算した人がいて、(「モーツァルト年譜」を編纂したヨーゼフ・ハインツ・アイブルという人)モーツァルトの生涯は日数にして13097日(35年10ケ月と9日)そのうち3720日(10年2ケ月8日)が計17回に及ぶ旅の日々ということになるのだそうです。
移動の範囲も広く、北はロンドン、アムステルダム、ベルリンあたりから、南はナポリ迄、西はパリから東がウィーンの先の現在のプラティスラヴァまで。
これについては、貞次さんの作品集の中の「旅のモーツァルト」のページをどうぞご参照ください。左ページの地図は貞次さん直筆のもの。

♡軽井沢での楽しみの一つは、小学館モーツァルト全集全15巻の中の書籍を読むこと。特に田辺秀樹著:「モーツァルトの横顔」という連載が目下のところとても面白い。「旅をしない人間は・・・」は第4巻に収められています。