一期一会の音楽♬

旅もいいが、やっぱりモーツァルトもいい。そんなことは、言わずもがなかもしれないが、昨日のコンサートを聴いて思った。日本モーツァルト協会主催の9月例会「フルート四重奏曲全曲&オーボエ四重奏曲(フルート版)」があまりに素晴らしかったから。いつまでも心に残る演奏会だった。
会場の入り口でばったりお会いした方との、ちょっとした立ち話で、”旅、お酒、モーツァルト”を知らない人生は、人生の楽しみが半分の様なもの”、などと意気投合して、気を良くしたせいか、これがいいプロローグとなってこの日のコンサートが始まったような気がする。

私は最近、旅の魅力もわかってきたような気がするし、モーツァルトを好きなのは誰にも負けないはず、ただ私はお酒はだんだん飲めなくなってきている。年のせいなのか、若い時はここだけの話だが、ウイスキーをロックで飲むのが一番好きで、結構飲めた方である。母は飲む人ではなかったが、父も、叔父も、親戚の人は本当にみんな強く、酒を昼から飲むのも珍しくもなんともなかった。母は、お茶代わりにコップ酒を出していましたから。私はそんな、酒どころ秋田で育った。

すっかり話が逸れてしまったが、昨晩の興奮からか、今朝は我が家にもフルート四重奏曲全曲のCDがあったなと思い、それを取り出して聴いている。ランパル(フルート)、スターン(ヴァイオリン)、アッカルド(ヴィオラ)、ロストボーヴィッチ(チェロ)、ジャケットに”現在考えられる最高の組み合わせによる1枚”とある。このCDは貞次さんが密かに持っていたもの。

昨日はオーボエ四重奏曲ヘ長調をフルート版で聴けたのはラッキーだったと思っている。このメンバーでこの演奏で聴けたことが素晴らしく良かったと思っている。まさに一期一会の体験。それにしても、上野さんのフルートは、何と美しく、なめらかで、やわらかいのに輝きを持っていて、私は本当に感動した。モーツァルトを研究し尽くして臨んでくれたのかと、感激もした。他のメンバーとの相性も抜群で、豪華な若手ヴィルトゥオーソを結集した”今聴ける最高のもの”だったのではないかと思っている。協会の担当者に感謝である。

それにしても、このプログラムの順番も憎い、この演目ならこういう演奏順だろうな~と、帰りの電車の中で思った。前半1曲目はK285b、そしてフルート版オーボエ四重奏曲、で休憩。後半はK285a、K298、そしてK285で終わる、最高のフィナーレだった。

モーツァルトの真作ではないかもしれないが、と知りながら貞次さんはK285bを好んでいた。第二楽章はよく自分で吹いては楽しんでいた。私はそれを良く聴かされていたので、この楽章の第四変奏短調のメロディーが流れたら貞次さんをずっと思い出してしまった。ここのところが好きだったんだな~と、よく吹いていたな~と。

貞次さんはいつも私の中にいるので、昨日は私と一緒に聴いているとは思っているが、終わった後、いつもしていたように、お互いがいろいろこうだ、ああだと話しかけられない寂しさを味わった。余韻を語れないもどかしさ、でもある。
今日はフルートを取り出して”僕も吹きたくなったよ”といって、好きないつものメロディーを吹いているような、そんな気もする。そんな姿が懐かしい。。