k377♬♡

モーツァルトのヴァイオリン・ソナタK377を、久しぶりに聴いた。この曲は生誕250年の記念ツァーの際に、移動のバスの中で流れた曲で、この時がこの曲との出会いだった。そのCDは、内田光子&スタインバーグのデュオで、今でも私の愛聴盤になっている。

日本モーツァルト協会の12月の例会はこの曲で幕を開けた。ヴァイオリンは大江馨さん、そしてピアノは實川風さんで、若手実力派のお二人、私の大好きなヴァイオリン・ソナタを、どんな風に演奏してくれるかと、とても楽しみにしていた。

大江馨さんのモーツァルトはたくさん聴く機会に恵まれていたので、安心感があった。高校生の時から知っているので、その取り組み方の真面目さや真剣さはよく知っていた。實川さんというピアニストさんも数々の受賞歴があり、才能あふれるお二人を揃え、お二人のヴァイオリンソナタを4曲も聴けるなんて、さすがモーツァルト協会でしか味わえないもったいない様な時間だった。

私はいつもコンサートで思うのだが、プログラム構成というのは、その演奏家の考えとか、描く風景とかがプログラムで示されていると思っているので、毎月の例会でも曲の順序とか、選曲にとても興味がある。

モーツァルトのヴァイオリンソナタは42曲(私の記憶では)あるので、それから4曲を選び、それをどういう順番でするか、それとも、先に順番を考えてそれにふさわしいのを当てはめていくのかなど、私は想像するのも楽しい。

この日は、ザルツブルクからウィーンに向かう移動バスの中で初めて聴いたK377を最初に持ってきてくれた。私はこの曲の出だしの旋律を気に入っているのだ。そして第二楽章のニ短調のアンダンテの涙が出そうなほどの物悲しさも。

スタートの曲は、最後の曲までを、ある意味占える大事なもので、そこで期待に胸を膨らませるのか、いや~どうかな?と思ってしまうのかなどが、決め手となるのがスタートの曲かなと。

この日、私はこの一曲目で、大江さんたちは聴衆の心を完全につかんだ気がしている。そして大江さんの個性が一番発揮された曲でもあった気がしている。

若いがゆえに、これからにも期待ができ、これから何年か先のお二人で奏でるモーツァルトをもう一度聴いてみたいという思いにもなった。

大江さんのことはいろいろなことがあって知り得た演奏家さんで、この日は貞次さんにも聴いて欲しかったとしみじみ思った。ここにいないことも寂しいことだと思った。いろいろ感想を言い合えた相手がいない寂しさをこの日はまた特に感じてしまった。

でも、天上できっと聴いていたと思う。