貞次さんとの朝食は、ご飯に味噌汁と決まっていた。鮭を焼いたり、アジなどの干物も貞次さんは好きだった。大根おろしにやまいも、納豆、卵、そしてヨーグルトに旬のフルーツ、トマトジュース、食後の珈琲も定番だった。出かける用事がない時は、これらがのる食卓を囲んで、ゆっくりと時間をかけて楽しんだ。
一人になった今、一時はあれこれ面倒で、パン食になった頃もあったが、いつの間にか和食になっている。鮭を焼いたり、干物を焼いたりも面倒でなくなった。何にでも時間と言うものはかかるんだなと思う。買ってきたおにぎりだったり、時には調理パンや、サンドイッチだったり、それさえも面倒な時があった。でも今はやはり、貞次さんと食べたご飯と味噌汁に戻っている。
そんなことで思い出すのは、軽井沢でのお客様との朝食、鮭を焼き、山芋、大根おろしにしらす、春菊か小松菜の胡麻和え、ポテトサラダは決まって作った。そしてアサリの味噌汁、時々なめこだった。漬物はスーパーツルヤさんの野沢菜のワサビ風味、これも貞次さんが好きだったので食卓にのった。
そして、決して主役にはならないが、秋田市民市場から取り寄せたハタハタ漬けや、筋子、たらこも並んだ。筋子は好みもあったが、たらこはその見事さで、喜ばれ、御飯が足りなくなりそうではらはらすることもあった。主役とは思わずにお出ししていたのが、いつの間にか主役級に人気だったのは、嬉しかった。パン食に慣れていた人には、こんな朝食は如何だったかと思うが、これが我が家の朝食だから仕方がない。
そんな秋田の特産の美味しいものを、市民市場の”高寅”の娘で、お店を手伝い、自ら吟味して送ってくれていた私の高校の同級生のかよちゃんが、病気になってはや2年になる。今も闘病生活を続けている。昨年の6月には自宅で闘病中のかよちゃんと電話で話した。ちょうど私が友達を連れて男鹿半島に行く時で、それを話したら「喜美ちゃんに、秋田に一緒に来てくれるような友達ができたなんて、本当によかったね」と喜んでくれたのを思い出す。
暮れに、ウィーンのお菓子を送ったら、喜んで電話を貰ったが、それ以後lineの繋がりはあっても、返信はなく、電話へも出てくれない。私はどうしているかと、ことあるごとに思い出しては、案じている。
朝食の思い出には、このかよちゃんが、欠かせない。そして、貞次さんは最期の最期まで、他は何も食べられなくなった頃にも、これだけは食べられるんだ、と白いご飯にパラパラとのせたこの筋子ご飯を食べていた。かよちゃん、この思い出は、私の一生の宝もの、あなたのお蔭です。どうしていますか?
