文化財に泊まる♬♡

短期間(正確には5日間)のうちに旅を2回した。最初は富山県宇奈月温泉、次はお彼岸中の故郷秋田へのお墓参りである。

それまでの”ふて寝”ばかりの、恥ずかしい日常から離れ、旅で心が癒され、豊かな気持ちにさせられた。それを身をもって体験した5日間でした。

秋田は今回もう一つ目的があった。以前から考えていた「文化財の宿に泊まる」という目的がそれ。それもただの建造物の魅力だけではなく、そこは源泉かけ流しの自前の温泉があること。「樅峰宛」(しょうほうえん)という国の有形文化財の温泉宿に泊まってみたかったのです。

その場所は、私が生まれた奥羽本線和田駅から上り電車で3つ目の駅「峰吉川」駅下車、住所は大仙市強首(こあくび)字強首268、峰吉川駅からは車で6分ほどの所。いわば私の地元にあるのです。

もともとは、この地域を広く収めていた庄屋さんのお屋敷ですが、大正6年(1917年)に建てられ築105年、大正ロマン漂う豪農のお屋敷がそのまま温泉宿になっています。聞くところによると15代当主であるご主人を亡くされた奥様が生活のために旅館を始められたのだそうです。

外観は社寺建築を思わせる千鳥破風と入り母屋造り、唐破風を採用した屋根が特徴。(こう説明すると何やら難しそうですが、お城の天守を思わせる立派なもの)。

平成11年に、国の有形文化財に登録され、温泉が敷地内に発掘されたのが平成20年と言いますから、目と鼻の近くにいながら私がこのような文化財の宿をがあるのを今まで知らなかった訳です。

有形文化財の登録には様々条件があり、築50年以上たっていること、再建が容易でないこと、地区の歴史的景観に寄与していること、造形の規範になっていることなどで、このような建造物を後世に残すため、平成8年に施行された制度とか。

外観も素晴らしいが、この時代にこんな場所にと思わせる、階段室には鹿鳴館的な意匠が施され、和風から一転してルネッサンス調の銀柱や手摺など、目を見張る様な見どころがいっぱいです。

食も、地元の食材を生かした、昔懐かしい田舎料理の数々で、心がこもっていて有難く頂きましたが、この辺りは、特別認定米の西仙北産あきたこまちの栽培地で、まだ残念ながら新米ではなかったのですが、つやつや光る炊き立てのご飯はそれは美味しかった。いぶりガッコは、お醤油漬け、粕漬などアレンジされ、16代当主の奥様が自らお台所に立ってくださっているそうで、心づくしのお料理ばかりでした。

私が実はこの宿に惹かれたのは、まだあって宿の名前の由来にもなっている樅(モミ)の木を、この目でみたかったのです。樹齢400年、高さ30Mにもなるモミの木は珍しく、お庭にそびえるモミの木群5本は、大仙市の指定有形文化財にもなっています。

これらは自生ではなく植えられたものだそうで、当時高い樹があることで、そこが庄屋さんとか役人の居所が分かるということで、モミの木はそういう格式のあるお家に植えられたものだったそうです。

温泉は、国内では希少な「含よう素泉」を所有し、その濃度も他とは比較できない程の高濃度で、すべての浴槽に源泉かけ流しで使用しています。

♡いろいろな魅力を秘めた 「樅峰宛」 でした。コロナの前は欧米からも多くの泊り客があったそうで、旅慣れた外国人が”文化財の宿”に泊まることに魅力を感じ、訪ねていたそうですが、地元の私は、正直、こんな所まで???え~と思いますが、わざわざ海を渡って遠くから、こんな田舎迄足を運んでくださり、古き日本の暮らしを体感でき、満足されたなら、良かったなと思いました。

明日は、東京でのお墓参りです。私の両親のお参りの方が早くなってしまいましたが、貞次さんもきっと待っていることでしょう。